産業用蓄電池の仕組みや特徴を解説! / 太陽光発電のライフソーラー

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産業用蓄電池の仕組みや特徴を解説!

2022.5.15


日本は災害大国と呼ばれ、昔から大規模な自然災害が多い国であり世界中で発生している大規模地震のうち二割は日本で起きています。
さらに地球温暖化の影響で、従来災害が少ないと言われていた地域でも自然災害が頻発しています。
こういった災害による停電の際には、産業用蓄電池が非常に心強い設備になってくれるのは間違いありません。
今回は、産業用蓄電池の概要・メリット・注意点などについて、ご紹介させていただきます。


■産業用蓄電池とは?

産業用蓄電池とは、一般家庭以外の場所(オフィスやビル・工場等)で運用される大型の蓄電池の総称です。
基本的な仕組みや役割は家庭用蓄電池と同様で、通常のコンセントや太陽光による発電システム、創エネ機器などから電気を電池に充電し、必要なときに出力することができます。
充電してしまえば、停電時も電力を供給できるため、災害などによる停電時の予備電力として重要な役割を担っています。
その特性から産業用蓄電池は、小規模な店舗から大型商業施設、工場や公共施設、病院やオフィスビルなど、さまざまな建物で活用されています。


■産業用蓄電池の特徴

続いて、産業用蓄電池の特徴ですが、産業用蓄電池は大容量である分、寿命も長くなるという特徴があります。
具体的には、充放電(充電・放電)を8000サイクル以上繰り返しても耐用可能な高性能タイプもあり、蓄電容量については10kWhから20kWh台のものが一般的で、最近では60kWhを超える大容量タイプの蓄電池も販売されています。
また、家庭用とは違い産業用蓄電池の場合は、活用状況に応じて、UPSやCVCF(定電圧定周波数装置)を設置する必要があります。

UPSとは停電が発生した時、瞬時に電源の切り替えを行う装置のことで、この装置を設置することで、パソコンやサーバーのシャットダウンを回避してデータの損失を防止することが可能です。
しかし、なかには電源の切り替えによって不調になる電子機器も存在します。
そういった場合は、停電時などにも安定的に電源を供給するためのUPSと似た機能を持つCFCVを搭載した電源装置を選択し、設定することが必要です。

このように、産業用蓄電池はサイズの大きさに加えて停電時に稼働したい機器に応じて付帯機能などのコストも発生するため導入時は家庭用蓄電池の数倍もの費用が発生することも珍しくありません。


■産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違い

続いて、産業用蓄電池と家庭用蓄電池の違いをご紹介します。
結論から申し上げますと、産業用蓄電池と家庭用蓄電池を区別する明確な違いはなく、しいてあげるならば、充電できる電気の容量が大きく違うところです。
産業用蓄電池はオフィスや工場、公共の施設などでの利用を前提に設計されているため、家庭用蓄電池の数倍~数十倍以上もの容量を備えていることが一般的です。
つまり、充電できる電気容量が最も大きな違いになります。

『家庭用蓄電池』として販売されている蓄電池の容量は概ね17kWh以下ですので、産業用蓄電池と家庭用蓄電池との違いは、容量が17kWh以下であるか否かという見方も出来ます。
その理由は消防法の規制があるためです。

リチウムイオンの蓄電池は『定格容量の合計が4,800Ah(アンペアアワー)』以下であれば、消防法の規制を受けないため、『家庭用蓄電池』では、定格容量の合計が4,800Ah以下、kWh換算で約17Wh以下になるように設計し販売されています。

よって、この上限を超えるものについては、

 ① 電気的出火危険防止

 ② 水素ガスの異常発生による燃焼の危険防止

 ③ 希硫酸による可燃物の酸化防止

といって安全規制が求められ、設置時には、所轄消防署に『設置届』の提出が求められます。

このような消防法の手続きを省略できるため、家庭用蓄電池は17kWh以下に留められています。
また、複数の蓄電池を統合してシステム化した蓄電池も産業用では多く散見されます。
その分サイズも大きくなり、一般家庭では設置に困るほどの大きさになります。一方、家庭用蓄電池はとても小型の製品設計になっているため種類によっては、一人で運ぶことも可能です。


■産業用蓄電池を導入するメリット

大量の電気エネルギーを必要とする工場や倉庫、オフィスなどでは産業用蓄電池の導入によって万一の災害時でも電源を確保できることや平常時の省エネ効果などがメリットとして捉えられています。
ここでは、産業用蓄電池のメリットについて、主に4点ご紹介します。

① 災害時の非常用電源を確保可能
 産業用蓄電池は、災害時でも一週間程度の非常用電源を確保することができると言われており、この点が、工場や倉庫にとって最も大きなメリットです。
 また、近年、台風の大型化や多頻度、さらには南海トラフ地震などの巨大地震が30年以内に約8割の確率で発生すると言われているため、災害時の備えは安全のためにも必要不可欠とも言えそうです。

② 災害時の拠点として活用可能
 施設規模や用途などで多少ニュアンスは異なりますが、太陽光発電及び蓄電池を併用設置することで電力の自給自足が実現できている大規模施設などでは、災害時の地域の避難拠点として活用することができ、万が一の時の頼れる施設=会社としてのランドマークになります。

③ 電力のコストダウン
 太陽光などの再エネ設備と連携させることで、施設の稼働に必要な電力供給を自給自足で賄うこともできます。
 年々高騰する電気代などに対し、ピークカットによる基本料金削減や深夜の安い電気を蓄電地に貯めて、日中に貯めておいた余剰電力を使用することで差額分の電気代が安くすることが出来ます。

④ 脱炭素社会に向けたイメージアップ
 近年、拡大する脱炭素社会に向けた世論や政府指針などに対し、蓄電池導入による環境貢献は、企業としてのイメージアップにつながります。


■産業用蓄電池を導入する際の注意点

最後に、産業用蓄電池を導入する際の注意点をご紹介します。
まず、一つ目としては、

① 導入するのに高いコストが発生
 産業用蓄電池最大のデメリットは、導入時に多額のコストがかかるという点です。
 近年、産業用蓄電池は投資効果があるとも認識され始めていますが導入のためにはやはり多額のコスト負担を覚悟しなければいけません。
 しかし、環境省や経産省から、産業用蓄電池に対して出されている補助金もございますので、補助金を活用して導入することがポイントです。

② 十分な設置スペースの確保必須
 産業用蓄電池はどの場所へも自由に設置できる訳ではありません。
 設置に適切な場所とそうでない場所があります。
 例えば、広々としたスペースや蓄電池自体に悪影響を及ぼさない環境の用意が必要です。

 補足として、いくつかの設置条件を紹介します。

  ・零度を下回るような寒冷地ではないこと:マイナス10度やマイナス20度のように零度を下回る温度の環境では産業用蓄電池本来の性能を発揮することはできません。理由としては低温時に生じるリチウムイオン電池の性能の低下によって、最悪の場合一切の動作が止まってしまうことがありうるからです。そのため、零度を下回る地域ではそもそも産業用蓄電池の案内をしていないメーカーもあります。

  ・広いスペースが確保できること:非常に多くの電力を貯めることのできる産業用蓄電池はどれもサイズが非常に大きいです。そのために蓄電池設置の際は一定の広いスペースがどうしても必要です。さらに、蓄電池設置の際は設置可能なスペースのみならず作業スペースも考慮して機器を選定する必要があります。

以上『非常時の備えとして、産業用蓄電池の特徴やメリット・注意点など』をご紹介しましたが、より安心する上で最もよい方法は「自家消費型太陽光発電との併用」といえます。
蓄電池と自家消費型太陽光発電との併用は、企業の脱炭素への取組みだけでなく、BCP対策や電気代削減などの様々なメリットがありますので、やはり最もオススメしたい取り組みです。

ぜひ、皆様もその取組みとしての蓄電池と自家消費型太陽光発電の併用導入をご検討ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。