太陽光発電の使用前自己確認制度の改正を解説! / 太陽光発電のライフソーラー

お役立ちコラム

太陽光発電の使用前自己確認制度の改正を解説!

2023.3.31

今回は2023年3月20日から施行された保安規制の強化による使用前自己確認の対象範囲拡大について解説いたします。

 


【新設】小規模事業用電気工作物区分

2023年3月20日より電気事業法の新たな要件が適用されます。
改正前の電気事業法では小出力発電設備(太陽電池発電設備(50kW 未満)、風力発電設備(20kW 未満))については、「一般用電気工作物」として取扱い、一部の保安規制は対象外とされていました。

今回の改正によってこれまで一部保安規制の対象外だった小出力発電設備 (太陽電池発電設備(10kW 以上50kW 未満)、風力発電設備(20kW 未満))について、新たな類型に位置づけられます。(小規模事業用電気工作物。下記図の黄枠部分)

また小出力発電設備には既存の事業用電気工作物相当の規制を適用(技術基準適合維持義務等)しつつ、保安規程・主任技術者関係の規制については、これに代わり、基礎情報届出が求められます。(下記図の赤枠部分)

引用:令和4年度小出力発電設備等保安力向上総合支援事業 (小出力発電設備の保安人材育成等事業

今回の改正によって大きく3つの変更がありました。
①技術基準適合維持義務の対象が拡大
②基礎情報届出が新設され義務化
③使用前自己確認の対象範囲が拡大と義務化

 


①技術基準適合維持義務の対象が拡大

これまでの制度でも行われていた技術基準適合維持義務ですが、今回の改正によって対象の範囲が拡大され、小規模事業用電気工作物も技術基準適合維持義務の対象となりました。

小規模事業用電気工作物の該当要件は以下のようになっています。

項目 該当条件
規模 太陽光:10kW以上~50kW未満
風力:20kW未満
新設/既設 いずれも
地上設置/屋根上設置 いずれも
FIT 認定あり/なし いずれも

小規模電気工作物は技術適合の維持を示すために「発電所の基本的な情報」の届出が必要になります。

 


②基礎情報届出が新設され義務化

これまでの制度において事業用電気工作物に関しては「保安規程の策定」や「主任技術者の専任」等の情報の届出が必要でした。

小規模事業用電気工作物に関してはその代わりとして「発電所の基本的な情報」を提出する必要があります。
提出に必要な項目の例は以下のようになっています。

(1)設備や設置者に係る基本的情報
設置者 事業者名
代表者名
事業者の住所
電話番号、電子メールアドレス
設備 電気工作物の名称
電気工作物の種類、出力規模
電気工作物の所在地(住所)
(2)保安体制に係る情報
保安体制 保安管理担当者名
(保守管理業務の受託者含む)
点検頻度
※業界団体が推奨する点検頻度に基づく場合にはチェックのみ

参考:経済産業省

今回の改正によって対象の範囲は拡大されましたが全ての設備において届出が必要になるのではなく、設備の用途や運用状況によって必要な対応が変わってきます。

①施行(2023年3月20日)以降に使用を開始する設備

使用開始前 基礎情報の届出が必要
変更時 以下の変更の際は届出が必要
・基礎情報に変更があるとき
・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき

②既設・FIT活用設備

施行時 基礎情報の届出は不要
変更時 以下の変更の際は届出が必要
・基礎情報に変更があるとき
・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき

③既設・FIT活用なし設備

施行時 施行から6か月以内に基礎情報の提出が必要
変更時 以下の変更の際は届出が必要
・基礎情報に変更があるとき
・小規模事業用電気工作物に該当しなくなるとき

 


③使用前自己確認の対象範囲が拡大と義務化

使用前自己確認とは太陽光発電設備や風力発電設備を稼働させるにあたって事前に国が定めた規定に沿って安全確認を行う作業のことです。

再生可能エネルギーの普及に伴い、自然災害などによって太陽光発電設備のパネル等の破損による被害が目立つようになりました。
このような事故や被害を減らすために使用前自己確認が行われていました。

使用前自己確認を行わなければ発電所は運転を開始することはできませんし、罰則が科される可能性もございます。

今回の電気事業法の改正によってその確認の対象範囲が拡大されました。
新設する一部の事業用電気工作物(太陽電池:500~2000kW未満、風力:20~500kW未満) 及び小規模事業用電気工作物(太陽電池:10~500kW未満、風力:20kW未満)は、使用前自己確認が義務となります。

基本的にはこれから新たに作られる設備が対象であり既設の設備は対象外ですが、以下のようなパネルの増設等の一定の変化を伴う工事を行った場合は使用前自己確認結果の提出が必要となります。


引用:小規模事業用電気工作物に係る保安規律の適正化

太陽光
・10kW以上の増設または支持物を含む取替えで、合計出力が2,000kW未満の設備
・10kWかつ出力5%以上の太陽電池パネルのみの取替えで、合計出力が2,000kW未満の設備
・20%以上の電圧の変更で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備
・支持物の強度の変更で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備
・支持物の強度に影響のある修理で、合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備

風力
・発電設備の増設で、合計出力が500kW未満の設備
・発電設備の取替えで、合計出力が500kW未満の設備
・回転速度の変更または5%以上の出力の変更で、合計出力が500kW未満の設備
・風車・支持物の強度の変更で、合計出力が500kW未満の設備
・調速装置・非常調速装置の種類の変更で、合計出力が500kW未満の設備
・風車・支持物の強度に影響のある修理で、合計出力が500kW未満の設備
・調速装置・非常調速装置の取替えで、合計出力が500kW未満の設備

届出はオーナー自身で行う必要がござます。
施工会社や販売店などでは代わりに申請することはできません。

使用前自己確認結果の届出の提出方法は「申請書類の郵送」「申請書類の持参」「保安ネットからオンライン申請」の3つあります。
オンラインの場合は24時間いつでも届出等が可能ですがIDやパスワードを取得する必要があるので注意が必要です。

 


今後、太陽光発電設備等の導入を検討されている方は正しく運転ができるように今一度どのような申請が必要なのか確認することが重要になります。

ご不明点等ございましたらお問い合わせください。